名古屋大学読書サークル

サークルメンバーがゆるりと記事を書くスペースです

レキシ

 

お久しぶりです、ゲダです。

このサークルもいつの間にか人が増え、気づいたら前回担当が回ってきた時から半年以上経ってしまっていました。

半年の間で、読書会の課題本以外で読んだ本を思い返すと、なんだか歴史関係や、国政にまつわるものの割合が高かった感じがします。

というわけで、今回は歴史関係でおすすめな本を紹介していきたいと思います。

紹介する中には、「歴史書籍」(本屋の「歴史」コーナーにありそうなもの)以外のものも含んでいますが、そのような本でも時系列で何かについて語っていて、歴史書籍を読んでいるのと同じような気持ちになったので、含めることにしました。

 

イスラームから見た世界史  タミム・アンサーリー

 

 

9.11以降を生きてきた自分にとって、中東(イスラーム世界)ははっきり言って「よくわからない、怖い」というようなイメージしか持っていませんでした。高校で歴史を学ぶ中で、イスラーム世界が想像していたより中心的な役割を担うことを知り、いつかイスラーム世界についての本を読んでみたいと思うようになりました。

本書はムスリムイスラーム教を信じる人)の古今の世界観とその世界観に主要な位置を占める歴史観について、イスラームの起源から現代までの歴史を辿ることで明らかにしていく内容になっています。著者自身がアフガニスタン人であることもあり、学術的なイスラームの「分析」にとどまらない、生のイスラームを知ることができる稀有な書物になっているのが特徴です。ここで紹介するどの本よりも詩情豊かに書かれたものでもあり、前半のイスラームの起源の部分についてはまるで小説を読んでいるかのような魅力があります。かといってイスラームの歴史を理想化していないのも、本書の価値を高めていると思います。

この本を読んでイスラームに対する見方だけでなく、世界史全体に対する複眼的な姿勢を培うことができたため、思い出深い本です。

 

昭和16年夏の敗戦 猪瀬直樹

 

 

コロナ禍における政府の意思決定を戦時中のものと同じと批判する意見を度々目にしていたので、実際に戦時中の意思決定とはどのようなものであったかを知りたくて読んでみました。

著者はジャーナリストだったこともあり、文体は読みやすかったのですが、引用部分が長い&読みにくい(「ニ非ザルシテ」とか、とにかく堅苦しい)ために少し苦戦しました。日本軍ほどではないけど。

本書には、政府の肝いりで選ばれた若手エリート官僚・軍人からなる総力戦研究所昭和16年の8月に政府の前で「日本必敗」の結論を発表した後、客観的な分析を無視し開戦に踏み切ったプロセスが描かれています。

コロナ禍で目立った日本の政府・官僚機構についての理解が深まるだけでなく、当時の出来事を通して東條や昭和天皇、近衛首相のような戦時の重要なアクターの人間性にも触れているところも魅力的な本です。

 

世界史の誕生 岡田英弘

 

 

イスラームから見た世界史を読んでから、世界史に対する西洋・東洋ではない視点の本がもう一冊読みたくなり、モンゴル・満州の専門家が著者である本書を読んでみました。

文庫化されていたのを読んだので、ある程度売れたんだと思いますが、正直高校で世界史を学んでいる人でないと、頻繁に「これ誰?」みたいな感じになってしまうと思いました。しかし、逆に世界史をある程度学んでいれば、面白いことは間違いないと思います。

本の扱っている歴史的・地理的範囲が広大かつ本自体がそんなに長くないため、あまり物語的に書かれていないのが玉に瑕なのですが、それでも読み手を引き込むのは主張をズバッと言い切るような語り口と、ミクロな分析からマクロに繋げている分析手法とそれによる説得力にあると思います。

世界史選択におすすめの一冊。

 

11の国のアメリカ史 コリン・ウッダート

 

 

上記の世界史の誕生を読んだときにアメリカへの言及があり、そういえばアメリカの歴史知らないなとなったので、たまたま図書館で見つけた本書を手に取ってみたら、想像を絶する面白さでした。2011年にアメリカで刊行されると同時に、ベストセラーになったことが頷ける読みやすさと内容の濃度があり、一度読み始めると止まらなくなる本です。

本書は近現代アメリカの400年の歴史を、互いに異なる11の民族文化的共同体(ネイション)を通して紐解いていくという体をとっています。この11のネイションの概念は本書が刊行される前から、文化地理学者や選挙戦略家のような専門家たちがアメリカの分断を分析するために研究していた分割方法らしいのですが、本書の特色はそれらネイションの視点からアメリカ史を辿ることで現代も続くアメリカの分断を体系的かつ説得的に説明してくれる点にあると思います。

こんなにいい本はないので、全員読みましょう。

 

最後に

僕は小さい頃から歴史が好きで、大学受験の時も歴史を(必要以上に)勉強していたりして楽しかったのですが、ちゃんとした歴史の本を読み始めたのは大学に入ってからで、それからさらに歴史を好きになりました。

高校受験で歴史は広く・浅く学ばれ、結局固有名詞や数字の暗記になってしまうのが悲しいところですが、実際の歴史はもっとドラマチックな物語であり、現在に直接関わってくるため、臨場感あるものです。

最後に、歴史を読んでみたいと思った方のために、僕が思う面白い歴史の本の選び方を以下に2点書いてみます。

  • 訳された本であること

ある本が日本語に翻訳されるということは、その本が最初に発売された国でよく売れていることが多いです。そのため、翻訳本には読みやすい傾向があると言える気がします。逆に、日本の歴史書では1990年代以降の実証ブームのせいもあってか、学者が実証的な研究を本にしたものの割合が多い気がします。そのため、経験的にはそんなに読みやすくないです。

  • 物語を大切にした本であること

何度も書くようですが、歴史の面白さの重要な原因はその物語性にあるので、多少長くなっても語りが物語を重視したものの方が読みやすいですし、読んだ後の記憶への残り方も全然違います。上記の実証的な本はそんなに分厚くないことが多いですが、物語的に書かれていないことが多いので、圧倒的に読みにくいです。

また、大学の中央図書館の歴史コーナーは面白い本が多いので、適当にとってパラパラ捲るのもおすすめです。

 

ここまで長くなってしまいましたが、最後まで読んでくれてありがとうございます。

では、また読書会で会いましょう。チャオ!