名古屋大学読書サークル

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なぜ読書をするのか

お久しぶりです。今回担当のイシです。

突然ですが、皆さん読書は好きですよね?

僕を含め、この記事を読んでいる方の中には読書を趣味と公言する人も多いかと思います。“趣味”というからには、読書にもほかの何ものにも変えられない魅力があるというわけですが、その魅力とは何でしょうか。今回はそこについて掘り下げていきます!

理由1:新しい知識を得るため

これは読書の最も目立つ利点ですよね。僕も「読書の何がいいの?」と聞かれたらだいたいこの返答をしています。また、大人が学生に対して本を読めというのもだいたいこの意味な気がします。教養本、参考書、啓発本、ビジネス本などはまさにこの理由が当てはまります。ノンフィクションも歴史本と同等に扱えば知識や知見として吸収できますし、そのほかの文学作品でも新しい考え方や価値観などを知ることができるので、この理由を含むこともあると思います。

しかしこの理由だけですべてを説明できるとは思えません。コメディーや恋愛小説、推理小説、ホラーなどが好きな人もいますよね?そんな本たちにあてはまるのが次の理由だと思います。

理由2:非現実に逃避するため

現実世界から目を背けたくなったときに小説の出番がやってきます。小説はノンフィクションを除けば、仮想世界での出来事であるため現実世界から距離を置くことができます。恋愛小説のような恋愛をする人、推理小説に登場するような事件に巻き込まれる人はめったにいませんし、ホラーは現実ではありえないと知っているからこそ恐怖心がかき立てられるわけです。魔法などの出てくるファンタジーもこの理由に当てはまります。理想世界、非現実世界に飛び込むことで現実と距離を置き、一時的に現実を忘れることができるのです。

そして理由1,2にも当てはまらない現実世界を則したような小説はどうなのでしょうか。テンプレ的な人間ドラマや青春を象った話などのことです。理想的な世界ではなく、自分または知人が似た経験をしたことがあるかもしれないような話です。それらを説明するのが理由3です。そしてこの理由こそが読書の最大の魅力ではないのかと僕は思っています。

理由3:登場人物の人格を味わうため

これだけ聞くとサイコパス的に聞こえますよね。(書いていて自分でもそう思いました。)とりあえずそんな誤解?を解くためにこの考えに至った経緯を説明します。

きっかけは中村文則さんの小説、王国の一節でした。

『その刺されて苦しむ男を、残忍に見るだけではつまらない。笑いながら見ていているのでもつまらない。しっかり同情するんだ。そいつの恋人やそいつを育てた親になどまで想像力を働かせ、同情の涙を流しながら、しかしもっと深く、もっと深くナイフを刺す。・・・(中略)・・・肝心なのは、全てを余すことなく味わい尽くすことだ。』

((王国(p75)))

引用文は場面が場面だったので少しやばく聞こえましたが、要するに自分ではない人に対して感情移入し、その人の苦しさを彼自身の感性で自分のことのように感じることが楽しみになるということです。(少なくとも僕はそう解釈をしました。)これは苦しみだけに当てはまるものではなく、喜びや悲しみ、緊張、憎悪などなど物語の登場する全ての感情であてはまるものだと思います。そしてこれは読書という行為にも拡張できると思うのです。この意味ならば納得できるのではないでしょうか。僕も小説を読んでいて、登場人物の喜びや悲しみなどを自分のことのように感じ、心動かされることが多々あります。(そして、その感覚って何ものにも替え難くいいものですよね。)つまり、物語の登場人物の人格を味わうことで、実際にしたことのない体験(感情などを含む)をすることができる。これが読書の魅力なのです。

 

しかし、これってドラマや映画などの映像媒体でも同じですよね。(と、この記事を執筆していてふと思いました。)これに対して、読書の魅力を決定づけるものとは何なのでしょうか。

それは映像媒体では速度が強制されるという点です。人によって感じ方だけはなく、感じるスピードにも差があると思います。皆さんもドラマなどで、意味もわからないうちに物語が進んでいったなんて経験のある人も多いのではないでしょうか。それでは満足に人格を味わい尽くすことができません。まあ逆に言えば、その波長が合えば問題なく感情移入できるんですけどね。その点、本は自分で速度を調整したり、過去の設定などがわからなくなったときに遡ったりできることが強みですね。

また、作品数も小説のほうが圧倒的に多く、より感情移入しやすい作品を数多く見つけることができます。

 

ここまでいろいろと理詰めで考えてきましたが、結局のところ理由もなく、好きだから本を読んでいるのかもしれません。(これも一種の真理なのでは?という気もしてきました。)そうであるならば今までの話が全て無駄になってしまいますが、本を読む意味について考えることは無意味でないと感じています。なぜなら、それは確実に読書を味わい尽くすことの助けになるからです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

文責:イシ