名古屋大学読書サークル

サークルメンバーがゆるりと記事を書くスペースです

最近の読了

 読み終えました。読み終えたのです。

 遅読かつ読みかけにして放置することで有名(?)なものですが、やっと読み終えました。

細雪」。

 先日の読書会でも紹介しましたが、なんせそれだけでは語り切れないので、ブログでも書くことにいたしましょう!

 

 ~あらすじ(上・中・下の三冊に渡るのでそれなりに長いです)~

 Wikipwdiaにとても詳しいあらすじが載っているのでそれをご参照ください。御免!

 

 まず、文章全体に絵画的、もしくは音楽的な美しさがあります。四人(メインで出てくるのは三人ですが)の姉妹が悲喜こもごもの中で年を重ねていく、それだけでもうある種の美しさがありませんか?

 特に私が好きなのは下巻の、姉妹たちが蛍狩りをする場面です。登場人物の回想として描かれるのですが、読んでいるだけでその場にいるような心地がします。ほら、暗い川べりからすうっと無数の蛍が光の尾を描いて舞い上がってくる…。きっと昭和初期には蛍もいっぱいいたんでしょうね。うっとりするような場面で必見です。蛍狩りのみならず様々な年中行事を楽しむ姉妹たち、幽玄な感じがします。

 しかし、そんな美しさと、生活感が同居しています。夏、着物が着られないくらい暑いから薄いワンピースで過ごしたり、大安の日に知らない美容院に行くと結婚式が多いから混雑しすぎていて参ったり、お見合いの話を大人同士でしていたら小学生の娘が聞き耳をそばだてていて生意気だな!となったり…。舞台が関西なので、独特の言葉遣いや文化なども楽しめます。きっと土地勘のある人だったらもっと楽しめるんでないでしょうか。

 さらに、当時の人々のライフステージについて思いをはせることもできます。結婚するにはこれほど面倒が多いのか、や、当時の小学生はどんなことを勉強していたのか、や、どこまでの行いをしたら不良少女と呼ばれるのか、などなど…。個人的に驚いたのはお見合いの煩わしさです。もちろん時代が違うので自分の感覚をスタンダードとして語ることは適切とはいえませんが、結婚して親よりも長い時間をともにするのに、家柄のつり合いだけ考えてすごく年上の人とお見合いをしたり、いい人だと思ったのになぜかすごい剣幕で断られたり…。まあ、結婚前に人格とか過去の結婚歴とか問題のあるところを徹底的に調べられるのはいいかもしれませんが……。

 「職業婦人」がまだそれほどメジャーでなかった時代の、苦労あれど優雅な上層階級の女性たちの生活を垣間見ることができます。長くなるので多くは触れませんが、解説に谷崎潤一郎についても詳しく書いてあります。

 

 長編ですので読むにはまあまあ根気が要りますが、のんびりと、生活のお供に読むにふさわしいと思います。個人的には電車の中で読むと趣があると思います。前回の記事にありました、名城線グルグル読書のお供にもいかがでしょうか。

 

meidaidokusyo.hatenablog.com

 

文責:鞠子