名古屋大学読書サークル

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記憶削除

嫌な記憶消を消したい。
少なからず嫌な記憶というものは皆さんあると思いますが、その記憶を思い出した時どのように対処していますか。

ちなみに私は想像上で頭を消します。頭に銃を当て脳を撃ち抜く瞬間を想像をします。バンッと。すると不思議なことに私の脳は、嫌な記憶を思い出すことをやめ、恐ろしく広いまっさらな空間を提供してくれます。思い出しそうになるたび私は脳を殺しています。なんだか物騒ですがただの想像ですし消したい記憶も自分の恥ずかしかった言動とかなので大したことはありません。昔は紙に止めろ!!と書き殴ったりして思い出すのを制止していましたが、傍から見たら痛い人間かただのヤバイ奴ですね。

さらにもう一つ、私は妄想によって記憶を上書きしています。私は結果を知っているわけですから正しい行動をし自分の都合のいいよう事が進んだことを”現実”にして嫌な記憶を薄れさせています。しかしながらこれはあまりお勧めできません。変えることのできない事実に引き戻されると現実の無能な私がひょっこり顔を表し、かえってショックを受けます。

 

どちらも記憶自体はしっかり残っているので根本的な解決にはなっていませんね。時間が記憶を薄れさせてくれはしますが私は消したいときに記憶を消したいです。
ですから記憶削除装置的なものが欲しいです。
都合の悪い部分だけ消して幸福を得たい。どんな記憶が消えたのかわからなければ幸福感を得られるか怪しいですが。

 

さて前置きが長くなってしまいました。
記憶を消すことにちなんで山田悠介さんの「メモリーを消すまで」をご紹介します。

www.kawade.co.jp

 2030年、日本では不況を背景に社会不安が増大し、様々な犯罪が多発し、重罪化していた。政府は犯罪撲滅のために人間の記憶をメモリーチップによって出し入れできる装置を開発し、全国民に脳内にメモリーチップを埋め込むことを義務付けた。経験したことすべてを記録することで自らの犯罪が絶対の証拠となり犯罪の減少、冤罪撲滅が期待されている。犯罪者たちは懲役刑に加え、更生のため犯罪に関する記憶を消され、記憶が消された事実のみを知らされる。重罪なものは生まれた時からの一切の記憶を消され、再教育される。

 人権を無視した現実では到底容認されないような設定がたくさん出てきます。突っ込みどころ満載ですが、実際に起きたら怖い設定にとてもゾクゾクさせられます。
記憶自体は記憶操作センターといった施設に管理されているようですが、管理しているのは人間であり、組織の中はかなり腐敗しています。組織内の権力闘争に記憶削除装置が使われ、事実は隠蔽されています。物語はメモリーチップ装着が義務付けられた65年後、2095年が舞台です。主人公は記憶削除を執行する機関の記憶操作官で、組織内で不正に記憶削除が行われていることを知ってしまい権力闘争に巻き込まれていきます。

あと8年で2030年ですが、記憶削除装置なるものは誕生しているのでしょうか?楽しみですね。

気になった方は是非読んでみてください。良いGWを。

 

書いた人 がおさん