名古屋大学読書サークル

サークルメンバーがゆるりと記事を書くスペースです

春終わり、好きな本で五十音

 

 eです。四月下旬に、愛する羊文学のニュー・アルバム『our hope』がリリースされて、春に殺されかけていたところをなんとか救ってもらいました。少女病を患っていたときは、どうしても<春が好きな女の子>でいたかったので、好きな季節は?と聞かれたら、うーん、春かな?(特に何もないのに何かに思いを馳せているような顔をする)と答えていたこともありましたが、はっきり言って、春はめちゃくちゃ苦手です。桜がきれいに咲いて光っていようが、夜の凍えるような寒さから解放されようが、私は、春がくると、おしまいの気持ちになり、常にちょっと震えています。今年は特にひどくて、えーん、なんだこれー?!という感じでした。

 というわけで、読書も映画鑑賞も捗らず、これといってブログに書くネタもないのですが、さっき歯磨きをしていて、何を書こうかなぁと、しゃこしゃこ考えていたら、五十音で好きな本紹介とかするのがいいかも!という気持ちになったので、今回は、私の好きな本のタイトルを五十音順に紹介してみます。(作者様の敬称略。e コメント、あるいは作中の好きなフレーズを添えて)

 

あ あしながおじさん(J・ウェブスター)

  大学の受験期に狂ったように五回は読みました。今読み返したら、少女病を再発する恐れがある胸アツ児童文学です。

い 犬のかたちをしているもの(高瀬隼子)

  死んだものにたいして、過去形ではない祈りをささげることの不思議を感じました。よみやすく、すばらしい!

う 生れた時からアルデンテ(平野紗季子)

  ”棒付きアイスほどクライマックスに集中しなくちゃいけない食べものはない”

え 選ばれなかった冒険(岡田淳

  登場人物が夢にまででてきて軽くホラーでした。小学校高学年は岡田淳さんの物語と共に過ごしました。

お おんなの女房(蝉谷めぐみ)

  はじめて読んだ時代小説。スタッカートとレガートが同居していて、美しい文章の流れを楽しめます。

か かか(宇佐見りん)

  ”人間が信仰を捨てることはままある、そいでも信仰を取り戻すことなんてできるんでしょうか。”

き 昨日星を探した言い訳(河野裕

  THE思春期小説という感じです。本のカバーもカバーを外した表紙もかなり気に入っています。

く クレーの絵本(谷川俊太郎

  ”どんなよろこびのふかいうみにも ひとつぶのなみだが とけていないということはない”

け 蹴りたい背中綿矢りさ

  この作者さんを好きになったきっかけの本です。この方の『しょうがの味は熱い』という本もお気に入り。

こ コンビニ人間村田沙耶香

  ゲラゲラ笑いながら何度も読みました。ガムみたいにずっと噛んでいたい、別れがたいリズムの良さ。

さ サイレンと屑(岡野大嗣)

  この方の生み出す歌に惹かれています。自分のトイレにもこの方のにゃーの歌のカードを貼っているのですー!

し 斜陽(太宰治

  読書サークルで太宰と出会うことができ、読書サークルに強火の感謝をしております。入ってよかったです……

す 彗星の孤独(寺尾紗穂

  ”自分の心を表現して発言することは、心の風通しをよくすることだ。”

せ 正欲(朝井リョウ

  朝井さんは読みやすくて、私の青春です。多様性を「受け入れる」という言葉の違和感を教えてくれます。

そ 空が分裂する(最果タヒ

  この方の言葉を捕まえることが苦手ですが、地球を見知らぬ乗り物で旅行している感覚は癖になります。

た 滝山コミューン一九七四(原武史

  教育学部の方には読んで欲しい一冊です。タイトルのかっこよさよ。中身も宝物です。

ち 茶色の朝(フランク・パブロフ)

  かつて好きだった人間にもらったので大事にしています。世界が荒れている今こそ、読むべき本だと思います。

つ 冷たい校舎の時は止まる(辻村深月

  伏線の張り方が一番好きな作家様で、この小説の愛蔵版ももっています。

て 寺山修司少女詩集(寺山修司

  海で読むと、この詩集と海の境目に立てて、よいのです。寺山修司さんは『あゝ、荒野』も読んでみたいです

と 図書館戦争シリーズ(有川浩

  ドハマりしました。このシリーズでは『図書館内乱』が一番好きです。小牧教官と毬江ちゃんを推しています。

な 夏物語(川上未映子

  「共感」というものを再定義し直しました。反出生主義と握手をするきっかけにもなった本です。

に 西の魔女が死んだ梨木香歩

  薬のように、苦しんだときに何度も読んでいます。少女だったときに出会いたかった物語です。

ぬ ★ ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(大前粟生)

   思いつかなかったので、読みたい本です……めちゃくちゃ読みたい、ぬいぐるみとしゃべる人は優しいと思うし。

ね 猫を抱いて象と泳ぐ(小川洋子

  チェスを題材にしていることに惹かれ読みました。描写の生々しさと温かさのバランスが美しいです。

の ★ ノルウェーの森(村上春樹

  またも思いつかなかったので、再挑戦したい本を。高校生の時に一度途中まで読み、挫折しました。

は パリの砂漠、東京の蜃気楼(金原ひとみ

  ”目を閉じて浮かぶものと、今目を開けてそこにあるものの差が耐え難い。ここにいたくないのにここにいる。”

ひ 暇と退屈の倫理学國分功一郎

  暇で狂いそうだったときに読みました。今はこの方の『中動態の世界ー意志と責任の考古学』を積ん読しています。

ふ プシュケの涙(柴村仁

  物語の構成が天才。これはこだわりですが、メディアワークス文庫版が好きです。分かる人には分かると思う。

へ ヘヴン(川上未映子

  自分の価値観を殴られ、最後まで抱きしめてはくれないのに、なぜか勇気が出る。世界は一つなのだなと思います。

ほ 星の子(今村夏子)

  誰かの創造物の中で語らる信仰にかなり興味があります。今村さんの本で一番好きなのは『こちら、あみ子』です。

ま 丸の内魔法少女ラクリーナ(村田沙耶香

  ぶっ飛んでます。大好きです。私も魔法少女だったので、その時の記憶が蘇り爆笑しながら号泣しました。

み ミシンと金魚(永井みみ)

  老いをここまで美しくなく、なまものとして描くことができるのかと鳥肌が立ちました。独特な疎外感を抱きました。

む ムーンライト・シャドウ(よしもとばなな

  『キッチン』に収録されている短篇です。この方の神秘は触れやすい。エドモンド・ヨウ監督が映画化もしています。

め ★ めぐり糸(青山七恵) 

  また思いつかなかったので、読みたいものを。青山七恵さんの「ひとり日和」推していますゆえ。

も 百瀬、こっちを向いて(中田永一

  タイトルに惹かれ読み、ときめきと切なさに痺れ、えー?!この作者さん、乙〇さんなの?!と驚いた記憶あります。

や やがて、海へと届く(彩瀬まる)

  東日本大震災をもとに書かれたものです。残された人間の寂しさが光っています。切実な物語ととらえました。

ゆ ユリイカ青土社

  本ではないですが、激推ししている月刊誌です。特に「ぬいぐるみの世界」「特集 岩井俊二」は宝物にしています。

よ 夜と霧(ヴィクトール・E・フランクル

  ナチス関係の本をよく読むのですが、この本と『アンネの日記』は、やはり自分にとっては特別です。

ら ★ ライ麦畑でつかまえて(J.D,サリンジャー

  めちゃくちゃ好きだったことは確かなのですが、それ以外の全てが記憶から抜けているので再読したいです。

り リトル・バイ・リトル(島本理生

  淡々とした文章の中で、指を澄ますと聞こえる息遣いのようなものが本当に好きで、島本作品は全部読んでいます。

る 流浪の月(凪良ゆう)

  読みやすく、硝子細工で殴ってくるような物語展開が最高。李相日監督が映画化してくださり、ありがとう世界です。

れ レインツリーの国有川浩

  ネット上のやりとりから始まるときめきトウィンクルな恋愛小説。(好きすぎて二次創作にも手を出しました。)

ろ ★ ロングコートダディ 

  本でもなんでもないです。あまりに思いつかなかったので、大好きなお笑いコンビを紛れ込ませておきます。

わ わたしを離さないで(カズオ・イシグロ

  生命倫理に関係する本です。いのちの隙間にあり、常に夜に置いてかれたような切ない音楽が聞こえます。大好き。

 

 思いのほか、時間がかかり、へとへとになりました。や行の「い」と「え」を抜かして、わ行は「わ」のみなので、実際のところ四十四音です。私はどちらかというと作家読みをするタイプだったのですが、大学生になり、本って誰が書いていても大体は面白いんだね?!と、世紀の大発見をしてから、色々な作家さんの本を読むようになり、半年ほど前からは、死んだ人間が書いた作品も好きになりました。死んだ人間は、SNSをやらないし、その人の文章だけが残されていて、もうどうしてもこちらの声があちらに届くことはなく、未来で私を幻滅させることもないと信じていられるので、そのあたりがとても気楽で、その気楽さが癖になっています。

 夏、また本格的に読書を再開したいです。今は、宇佐見りんさんの新刊『くるまの娘』を読むことと、実写版の「流浪の月」、ローベル・ブレッソン監督の「たぶん悪魔が」を映画館へ見に行くことを楽しみに生きています。「たぶん悪魔が」に関しては、すでにBlu-rayになっていますが、映画館で見られるならそれに越したことはないと思っています。

 

 

 

 よかったら、みなさんも、好きな本の五十音チャレンジやってみてくださいね。

 それでは、また。e でした。