名古屋大学読書サークル

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ついつい読む手を止められない!

初めまして。1年のイシです。読書好きな理系大学生です。僕は非日常を味わうため、新しい考え方に出会うために本を読んでいます。忙しい日常と折り合いをつけつつ、だいたい週に1冊のペースで読んでいるのですが、時々どうしてもページをめくる手を止められない作品というものに出会ってしまいます。そこで今回は、まだ課題が全然片付いてないのに~とか、明日朝が早いのに~とか思いつつも最後まで読んでしまった本を紹介していきます。

 

「15歳のテロリスト」

15歳のテロリスト (メディアワークス文庫)

15歳のテロリスト (メディアワークス文庫)

 

「すべて吹き飛んでしまえ」15歳の少年の爆破予告。そして予告通りに新宿駅が爆破された。その少年は少年犯罪により家族を奪われた孤独な少年であった。何が少年をそうさせたのか。少年のことをよく知る記者、安藤は事件直後から彼の行方を追う。事件の足取りをたどるうちに安藤は事件の真相に気づき・・・・・・。

 

ページをめくるたびに予想が裏切られる感覚。一度味わったらやみつきになりますよね。扱っている内容は少年犯罪や顔の見えないSNSを通して聞こえる世間の「声」など、少し陰鬱なものですが、途中で手を止めることなく読み切れました。そして、なんといってもこの作品の魅力は驚愕のラスト。読む前と後では少年、渡辺篤人への心証が180度変わります。彼のしたことは本当に間違っていたのか。そして、本当の正しさとは何なのかについて問いかけられる作品でした。

これ以外の松村さんの作品でも”ページをめくるたびに予想を裏切られる感覚”を味わうことが出来ます。それを欲して全作読んでしまいました。ちなみに今月の25日に新作が出るようです。クリスマスが楽しみ~。

 

 

ジョーカー・ゲーム」 

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

 

昭和12年秋、日本が戦争へと向かう中で一人の陸軍中佐によってスパイ養成学校、通称D機関が設立された。奇妙奇天烈な試験を合格した化け物たち。彼らは精神的、肉体的に過酷な訓練からあらゆる分野の座学、果てには金庫破りなど様々な訓練を鼻歌交じりにこなしてみせた。彼らを動かしているのは“自分ならこの程度のことは出来なければならない。”という恐ろしいほどの自負心だけ。そんな彼らは世界各地へ散らばり、見えない影として暗躍する。

 

ジョーカー・ゲーム」は「ジョーカー・ゲーム」、「ダブル・ジョーカー」、「パラダイス・ロスト」、「ラスト・ワルツ」からなるジョーカー・ゲームシリーズの一作です。このシリーズはいくつかの短編で構成されており、それぞれの話で異なるスパイ、異なる舞台が用意されています。共通するのはD機関出身のスパイが登場するということだけ。話の中にはスパイの存在が巧妙に隠されており、最後を読むまで誰がD機関のスパイだったのかわからなかったものもありました。スパイを探せ、真相を見破れといったミステリー的要素を踏まえつつ、現代に共通するメッセージを感じさせられる場面もありました。「とらわれることは、目の前にある状況を見誤る第一歩だ」右へ倣えの日本文化は、今も昔も大して変わっていない気もします。

 

 

「私が大好きな小説家を殺すまで」

人気小説家の遙川悠真が失踪した。彼の家に残された手がかりは「部屋」という小説のみ。事件を捜査する刑事は「部屋」を読み、少女、幕居梓と遙川悠真の奇妙な共生関係を知る。没落した天才とそんな天才を愛してしまった少女。だからこそ幕居梓は遙川悠真を殺さなければならなかった。

 

『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は、遙川悠真に死んで欲しかった。』まず、この冒頭部分に魅了され、購入を即決しました。これは“敬愛する”と“殺す”という一見して相反して見える二つのものは異なっているようで実は同じだっていう作品です。なんだか一見すると意味のわからない理論のように聞こえてくるかもしれませんが、最後まで読めばきっと腑に落ちるはずです。ドキドキワクワクというよりは混沌とした二人の関係にだんだんと引き込まれていく感覚でした。蟻地獄のように一度足を踏み入れたら容易には抜け出せません。

 

 

「AI崩壊」

AI崩壊 (講談社文庫)

AI崩壊 (講談社文庫)

 

 2030年、日本は画期的なAI「のぞみ」に社会を託していた。そんな中「のぞみ」が乗っ取られ、制御不能となり、社会は混乱へと陥いった。暴走を止められるのは犯人と誤認され追いかけられている天才、桐生浩介ただ一人。すべての判断をAIに任せる警察組織。そんな中で「のぞみ」はついに社会に必要な人間とそうでない人間を分ける命の選別を始めた。

 

AI社会とAIの暴走。いかにも小論文で出てきそうな内容であるとこの本を手に取ったときに感じました。よくある話題でありながらも、飽きることなく最後までノンストップで読んでしまいました。AI社会に対する考察とか堅い感じではなく、あくまでサスペンス調であることが魅力であると思います。無機質なAIを扱うことで、かえって人間らしさが強調されているように見えて、とても読みやすく感じました。

 

 

「さよならの言い方なんて知らない。」

さよならの言い方なんて知らない。 (新潮文庫nex)

さよならの言い方なんて知らない。 (新潮文庫nex)

  • 作者:裕, 河野
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 文庫
 

 永遠と続く8月。能力者の集まる架見崎。そんな中で戦争という名のゲームが行われていた。架見崎に招待された香屋歩は戦いを強いる架見崎のシステム自体に対抗する能力を得て、果敢に立ち回っていく。

 

サクラダ、階段島シリーズに続く架見崎シリーズの開幕です。能力、戦争といったバトルファンジー的な一面を持つ一方で、なぜ生きなければならないのかといったメッセージ性を含んだ面も見受けられます。現在4巻まで刊行されており、しだいに戦争は終盤へと向かっています。果たして最後に笑うのは誰なのでしょうか。続きが気になります。

 

 

まだまだ紹介したい本はありますが、そろそろ課題に戻らなければならないようです。今回のブログを書くにあたって、いろいろと読み返していたのですが、結局書くよりも読んでた時間の方が長くなってしまったような気がします・・・。

なにはともあれ、どれも魅力的な本なのでぜひぜひ読んでみてください。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

文責:イシ