名古屋大学読書サークル

サークルメンバーがゆるりと記事を書くスペースです

Bonjour Tristesse

ボンジュールマドモアゼル、ムッシュ

皆さんいかがお過ごしでしょうか。

まず長らくブログを止めてしまいすいませんでした!この罪は重いですね。もう何でもします。サークルの犬となって働くので許してください。

 

皆さん最近悲しいことはありましたか。思い浮かべてみてください。

悲しみを紛らわせるにはより一層深い悲しみに触れるといいのかもしれません。

 フランソワ―ズ・サガンの「悲しみよこんにちは」を読みました。

www.shinchosha.co.jp

あらすじ

幼い時に母を亡くしたセシルと父レイモン、愛人のエルザは3人で地中海へヴァカンスに出かけます。そのヴァカンスに父のもう一人の恋人アンヌが現れます。アンヌは聡明で超然とした美しい女性です。セシルは別荘先で出会ったシリルという青年と恋に落ちますがアンヌに強く反対されます。父がアンヌとの再婚を考えていることを知ったセシルは、今までの快楽や面白さを求めた気ままな暮らしを冷笑し知的な友人に囲まれたバランスの良い堅実な生活へと変えてしまうアンヌに不快感を感じ、アンヌを自分の生活から追い出す計画をします。

しかし徐々にアンヌという理知的な女性との暮らしに自尊心や優越感が心に広がったセシルは居心地の良さを感じ始めます。そして複雑な気持ちの中、計画が成功することを不安に思うようになります。アンヌを追い出す計画の途中で悲劇が起きます。

 

 

どうでもいいですが、私はセシルとシリルの間で繰り広げられる夕暮れ時の海のごとく眩しい恋愛に、悲しみを紛らわすどころか却ってダメージを受けました。残り5ページくらいでようやくHello Sadnessになり少しほっとしました。

個人的にはセシルとアンヌの心理描写やヴァカンスでの情景描写がよかったです。

朝光の落ちるベットで目を覚まし、一度冷たいシーツに身を預けて起きる。朝食に熱いブラックコーヒと甘いオレンジをかじる様子などが色彩豊かで鮮やかでした。

本の冒頭でセシルは、悲しみと一言では表せない感情を「なにか絹のように滑らかに、まとわりつくように私を覆い、人々から私を引き離す」と表現していました。それは単なる圧迫感や痛み、暗さではなく生ぬるく寂しい優しさを感じました。表現が洗練されておりとても文章がこなれていました。サガンの表現力なのか、翻訳者の訳が上手いのかわからなくなりました。

 短く読みやすいのでぜひ読んでみてください!

 

 

本とは全く関係ありませんが、面白かったのでマリーナ・アブラモヴィッチのパフォーミングアート、リズムシリーズの「Rhythm0」について紹介しておきます。        

www.artpedia.asia

そもそもパフォーミングアートとは芸術家自身の体が表現の媒体となり、観客、時間、場所、パフォーマーの体、4つの要素が作品を構成するものです。

1974年に発表されたマリーナアブラモヴィッチの「Rhythm0」は、観客に6時間の時間と72個のアイテムが与えられ、観客の望むままにそれらのアイテムを無抵抗のアブラモヴィッチに対して使わせるというものでした。

72個のアイテムの中には薔薇や紐、ハサミや鞭、銃弾と銃などがありました。

観客は初めのうちは遠慮がちにそれらのアイテムを使っていましたが、異様な状況に置かれることで精神状態が変容していき徐々にアブラモヴィッチを傷つけるようになります。最終的に彼女は服を切り裂かれ首元は剃刀で切られ、手には銃が握らされた状態となっていました。社会的ルールから隔絶されたとき、人はどのくらい攻撃的になるのかを証明した作品です。

無意識のうちに他者を傷つけたいという心理が人間にはあるんでしょうか。ほかのリズムシリーズもとても面白いのでぜひ見てください。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

書いた人 がおさん