名古屋大学読書サークル

サークルメンバーがゆるりと記事を書くスペースです

女心を抉る本たち

 

こんにちは。

初めての投稿で緊張しております、3年の村松です。

 

1月も中盤を迎え、少々時間は遡りますが、皆さん大晦日は紅白派ですか?ガキ使派ですか?

私は毎年紅白なのですが、年末に書店でも「紅白本合戦」なるものを発見しました。

https://www.shinchosha.co.jp/bunko/fair/

新潮文庫さんの企画で、今年で6回目だそうです。

作者の方の男女ではなく、男性読者・女性読者それぞれに人気だった本のランキングになっています。

一覧になっているサイトが見つからなかったので1〜5位までを紹介すると、

 

【紅組】

1「この世の春」宮部みゆき

2「絶唱湊かなえ

3「BUTTER」柚木麻子

4「許されようとは思いません」芦沢央

5「デトロイト美術館の奇跡」原田マハ

 

【白組】

1「ホワイトラビット」伊坂幸太郎

2「ペスト」カミュ

3「カエルの楽園2020」百田尚樹

4「変なおじさん完全版」志村けん

5「沈黙法廷」佐々木譲

 

という風になっています。(敬称略)

 

こう見ると、ランクインする作家さんが全然被らないな、なんだかんだ言っても同性の作家さんに共感しやすいのかな、とラインナップを見るだけでかなり面白いです。

ちなみに私は女なのですが、タイトルだけ見るとやはり紅組の方に惹かれます。不思議!

  

最近では男女の壁も薄くなってきており、ゆくゆくはこれぞ女性向け!なんて本も減っていくのかもしれません。しかし現状、女性と男性の見ている世界はかなり違うと思います。

私が白組の本を読んでも十分面白いし、逆もまたそうだと思うのですが、女性だから、男性だからこそ深く刺さる感情ってあると思います。それがこのランキングに表れているのかもしれませんね。

ということで前置きが長くなりましたが、今回は私が女性読者にお勧めしたい本を2冊紹介します。

 

 

BUTTER(新潮文庫)

 

「男を決して凌駕しないこと。ーすべての女は女神になればいいのだ」

 

1冊目は紅組3位の「BUTTER」です。

太字は作中からの引用ですが、男も女も、ヒヤッとしませんか?

こんな感じの主張をする連続殺人の容疑者 梶井真奈子と、それを取材する週刊誌記者の女性のお話です。

フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井の展開する女性論は、今ネットに書いたら袋叩きにされそうな、なかなか極端な内容です。しかし漂うカリスマ性でうっかり飲まれそうになってしまう。家庭的?スレンダー美人?社会の求める女性とは何か。彼女の言葉から考えさせられることが多く、毒っけの多い本が好きな方にお勧めな一冊です。

 

ただし、注意事項がひとつ。

ダイエット中に読んではいけません!

主人公の女性記者、食レポ技術が半端ないです。上記のヘビーな内容で心が消費することとも相まって、読後は絶対にバターたっぷりの料理が食べたくなります。または本編の内容でダイエットの意義も見失うかも。そこだけ気をつけて読んでみてください。

 

 

 

 

愛されなくても別に



「愛されてたら、子供はなんでも許さなきゃいけないわけ」

2冊目は武田綾乃さんの「愛されなくても別に」。親に搾取される女子大生2人のお話です。作中の女の子たちを見ていて辛い部分もありますが、読後感はスッキリ。上の本がバターなら、こっちはバニラアイスぐらいの濃度です。

 

「時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。」

これは帯文なのですが、そう言われてみると、家族や友人のような“愛”って重要視されすぎている気もします。贅沢品というより、無いと死ぬ!みたいな。

時間やお金より愛が欲しい!というのも勿論わかります。でも、愛を盾にして時間やお金を搾取していいのでしょうか。それって完全に誘拐犯の手口ですよね。

こういう依存関係って、この作品でもそうですが母と娘の間に多いような気がします。その意味で、全国の母娘に読んで欲しい本です。

愛の素晴らしさを謳う物語ももちろん素敵ですが、こういう本も同時に必要だと思わされました。

 

 

 

なんだかずいぶん女性に肩入れしてしまいましたが、今回はここで終わります。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

 

 

 

 

参考:「 BUTTER」柚木麻子

   「愛されなくても別に」武田綾乃

   新潮文庫Instagram  https://www.instagram.com/shinchobunko/?hl=ja

 

文 :村松