名古屋大学読書サークル

サークルメンバーがゆるりと記事を書くスペースです

”えせ”イタリア旅行記

とあるアニメを見ていて、唐突にイタリアへ行きたくなりました。

ので、”えせ”イタリア旅行に行くことにしました。

 

〇用意したもの

・グーグルマップ

・イタリアについて書かれた本

 (今回は著者による約三年間の海外生活についての文章がまとめられた「遠い太鼓」を選びました。南ヨーロッパ各地での定住と旅行の記録が繰り返されているため、両方の雰囲気を味わうことができお得な気分になります。)

 

〇方法

 ①本を一通り読む

 ②行ってみたい土地の記事があるページにしおりを挟む

 ③パソコンを用意する

 ④ピックアップした土地をグーグルマップで調べる

 ⑤ストリートビューで風景を映し、記事に沿って移動しつつそれっぽい気分を楽しむ

 

 今回はイタリアを中心に3か所選び、順番に巡りました。本当はストリートビューの画像を載せるつもりでしたが、著作権の問題が不安で諦めました。風景が気になる方は、よろしければ、お手元のスマホやパソコンのグーグルマップで同じ場所を調べながら読み進めていただけると嬉しいです。

 それではレッツゴー!

 

1,ボルゲーゼ公園

僕はボルゲーゼ公園の芝生の上に腰を下ろして日光浴をしている。屋台のオレンジ・ジュースを飲み、一人でぼんやりと空を眺めたり、まわりの人々の姿を眺めたりしている。(中略)広場では一群の人々が大型の気球を上げようとしているが、何らかの理由でそれがうまくいかない。三人ばかりがぱたぱたと忙しく走りまわって機械を調整したりして、あとの人々はいささか退屈しているようである。

作者が旅の本拠地としたローマに位置するボルゲーゼ公園。芝生と気球が上げられるほどの広場があるという描写から、だだっぴろいグラウンドの端に遊具が点在しているような場所を何となく想像していましたが、いざ見てみると敷地内に美術館、神殿、ボートで遊べるサイズの湖、さらにそれを取り巻く庭園を擁するとんでもなく広大な施設でした。用意したオレンジジュースを片手にポチポチと進むも、行けども行けども敷地から出られず、本当に歩いているわけではないのに少し疲れを感じる程。お目当ての気球は見られなかったものの、昼下がりのお散歩に勤しむローマ市民になった気分を味わうことができました。

 

2,メータ村

四月十二日の日曜日、パーム・サンデー、ウサコとウビさんの夫婦と僕と女房の四人でメータ村に遊びに行く。(中略)メータ村は十一世紀まで歴史をさかのぼることのできる古い村である。最初は山の本当のてっぺんにあったのだが、一九一五年に大地震があって家が殆ど崩壊し、百メートルほど下にまるごと村が移された。だから山のてっぺんにはその崩壊した村がだいたいそのままの形で残っている。辺鄙を絵に描いたような村である。

ローマから車で1~2時間離れた山の中にあるというメータ村。作中でその辺鄙さが繰り返し強調されていた通り、周囲を山に囲まれた山の斜面に張り付くようにして成立している小さな村でした。それを見たさで目的地として選んでいた崩壊した村の残骸はストリートビューでは見つけられず、航空写真でもうまく確認することができませんでしたが、村内の道路はほとんどすべてストリートビューに対応していたため、歩く感覚で巡ることができました。撮影が12月ということでサンタの人形やオーナメントで飾られた家々の通りを抜けると、石畳の広場の中心に立派な噴水がたたずんでいます。村に立つ噴水については、この村の出身である同行者ウビさんの兄が立てたものと作中に言及があったため、ストリートビューで見て「今も本当にあるんだ!」と嬉しくなりました。

 

3,ハルキ島

ハルキ島というのはかなり小さな島で、そこには町と呼べるようなものはたったひとつしかない。あとは山と荒地しかない。道さえろくにない。道がないから車だってほとんどない。船とロバがこの島の主要交通機関である。ぽぽぽぽぽ、という漁船のエンジンがほぼ唯一の騒音である。

イタリアからは少し離れて、次に向かうはギリシャエーゲ海。作者が同名の縁で訪れたハルキ島は、海に浮かぶ小さな島です。道路の少なさゆえかストリートビューはありませんでしたが、地点ごとに撮られた写真から島の様子を見ることができました。島のほとんどは茶色の荒れ地に覆われ、海沿いにわずかに家や商店が並んでいます。赤系統の色で統一された屋根に対し、壁は白、青、黄色などとてもカラフルで、まるで絵本の挿絵のような美しい街並みです。おまけにビーチから見える海がめちゃめちゃにきれいで、もし世界に自分と同じ名前の土地があって、そこがこんなにきれいな場所だったらきっとすごく嬉しいだろうなと思いました。

 

以上、えせイタリア旅行の記録でした。

思いつきで行き当たりばったりに始めた企画でしたが、ストリートビューで入れる場所や眺められる範囲が想像以上に広かったこと、さらに異国の景色が興味深かったことから、事前に考えていたよりもはるかに旅行気分を味わうことができました。

同様に映像や絵に表れた風景を追うこともできると思うのですが、あえて絵や映像のない本の知識だけを頼りに進むことで、書かれていた通りのものが写真として現実に表れてくる面白さ、さらに思っていたものと全く異なる事物や風景に出会ったときの驚きが鮮明になって、また違った楽しみ方ができるように感じました。

もちろん実際にその場を訪れる体験には比べようもないですが、地図上の旅は手軽な上に、お金も言葉の知識も感染症の心配も不要という魅力を持っています。

皆さんもぜひ、お気に入りの本を片手にグーグルマップで旅をしてみませんか。

 

書いた人:黒谷