名古屋大学読書サークル

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メイド喫茶概論 ーー基礎、そして応用へ

そういえばこのブログ、良識さえあれば何書いてもいいらしいので、メイド喫茶について書きますね。今日から名大読書サークル名大メイド喫茶サークル(略称:メメサー)です。

メメサー、いい響きですね。

 

なぜメイド喫茶の話題なのか、というのもこの前メイド喫茶というものに初めて行ったからです。

と言うといささか適当すぎるので、メイド喫茶は日本のサブカルチャーの特筆すべき『萌え』文化の具現であり、メイドは漫画から文芸に至るまで『萌え』を表す記号になっている。」と言えば読書サークルで書く意義が出ますかね?じゃあそういうことにしましょう。

 

なので別にメイド喫茶に詳しいわけでも、好きなわけでも、嫌いなわけでもないです。でもマジで面白かったので、みんな1回は行くといいと思います。

 

行った行ったと言いましたが、行ったと同時に意味が分からなくもなりました。文化があまりに独特すぎて、例えるならアマゾンの密林の生物を見てる気分になったからです。ちなみに僕は生物専攻なのでこれは褒め言葉です。

つまり何がこの文化を特異たらしめているのかとても気になりました。

 

気になってしまっては調べるしかないですね。調べました。

 

もくじ

 

基礎知識

メイド喫茶には大きく分けて2つ存在するようです。

 

・パフォーマンスメイン(一般に想像されるメイド喫茶)

・飲食メイン(クラシカル系)

 

前者が世間一般でいうところのメイド喫茶です。入店すると猫耳つけられたり、メイドがアイドルのように歌って踊ったりするところですね。

このサブカル的振る舞いが人を選ぶ傾向にあるようで、私の知り合いは猫耳を付けられて最悪な気分になったらしいです。私はパーソナルスペースがクソ広いので、猫耳されたら無意識にメイド殴りそうです。

ただこれらの行為がメイド喫茶メイド喫茶たらしめているのは間違いない事実です。

 

後者は茶店性をより前面に押し出した営業形態です。パフォーマンスメインの店は、料理に(見た目はともかく、味は)あまり力を入れていない傾向にあるようで、「メイドもいいけど喫茶店としても楽しみたい」という需要に応えた形になります。

また、先ほどの接客が入店の敷居を高くしている側面もあるため、新規顧客獲得のために、あえてそのような接客をしない、という意図もあるようです。

こちらは前者と比較してよりマイナーな形態(というかパフォーマンスメインの店がメイド喫茶ブームの火付け役となり、業界を寡占してしまった)ですが、メイド喫茶としての歴史はパフォーマンスメインの店より古いらしいです。

 

メイド喫茶の特異性

メイド喫茶で特異的なのは、制服に表象されるように、店=客のお屋敷という設定にあるでしょう。
そのため入店は「ご帰宅」、退店は「お出かけ」となります。(店により違いはある)

 

メイド喫茶は基本的に単位時間あたり席料が発生し、時間になると「お出かけ(=退店)になりますか?」的な事を聞かれるので、この事を頭に入れておく必要があります。

ちなみに私は全く知らなかったので、「は?」と言ってしまいました。気をつけましょう。

 

この営業形態はどこからきたのか?

メイド喫茶といえば、今挙げたようなシチュエーション、更には「猫耳」「おまじない」など、奇抜な接客が思い浮かぶと思います。これらがある日突然出現したとは考えにくいですよね。

そう、メイド喫茶には起源があるのです。

 

時は1997年に遡ります。

成人向け恋愛シュミレーションゲーム『Pia♡キャロットへようこそ!!2』の発売を受け、「東京キャラクターショー1998」にアニメゲームの企画・制作とショップ「ゲーマーズ」を運営するブロッコリーが、同タイトルの舞台を再現したレストランを出店したのが始まりです(出典:現代消費文化を覗く-あなたの知らないオタクの世界(3)廣瀨 涼 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61840?site=nli)

これを常設した店が徐々に広まり、00年代のアキバブームと共に爆発的に広まったと見られます。

特異だな~とは思っていましたが、納得の出自です。ある一部の集団で流行ったコアな内容が、世間一般的に見受けられるまでに広まったのは、なかなか興味深いですね。「電車男」など、サブカルチャーに光が当たり始めた時代だったからこそ、広まり得たのかもしれません。

 

ところで、メイド喫茶がエロゲ発の文化であることに驚かれる方もいるかもしれませんが、90年代以降のアニメや漫画関連の文化は元がエロゲであることはザラなので、まあなんていうかそういうことなんですよ。エロはカオス、カオスは全てが生まれる場所なので......。

 

主従関係の倒錯

話は現行のメイド喫茶へ戻ります。

メイド喫茶は店員がメイド=召使いであるため、見かけ上、客優位の構図が成立しています。

が、メイド喫茶のメイドは同時にアイドル性を兼ね備えています。

 

例えば、メイド喫茶ではメイドのバースデーイベントをよくやります。これはメイドが召使いであるという前提からはあまり思いつかない発想です。そしてこのイベント時には、客からプレゼントが届きます。これは客がメイドを偶像として崇拝しているといえるのではないでしょうか。

そうでなくとも、ライブをやったり、アイドルや声優志望の人間が数多く勤めている現状を見ると、メイドのアイドル性は確実なものであると信じて止みません。

 

このように、メイド喫茶では「主人=客」>「メイド」であると同時に「客」<「メイド=偶像」という倒錯が見られます。私はこの点が一番面白いと思っています(なんかウケるので)。そして特異性の肝でもある気がします。

 

風営法

メイド喫茶では、メイドが接客をします(当然ですが)。料理を頼んでから出るまでの時間は談笑したりもします。

 

金を払うと若い女の子が話してくれる。

 

 

.......(Thinking time)

 

 

私は思いました。

 

「なんかこれキャバクラっぽいぞ?キャバクラ行ったことないけどと。

 

 

そうなると気になるのは風営法です。メイド喫茶風営法に抵触するのか?

 

風営法第二条において風俗営業は以下のように定義されています。

 

接待飲食等営業1号営業 - 客を接待して飲食させる営業する、キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備(キャバレー、クラブ、ホストクラブ、キャバクラなど)
2号営業 - 低照度飲食店(10ルクス以下の暗い喫茶店・バー。店員による接待は出来無い。1号営業を除く。)
3号営業 - 区画席飲食店。他から見通すことが困難で広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの(カップル喫茶)2005年10月27日の参議院内閣委員会における黒岩宇洋の質問によれば、許可を受けている2号営業(当時は5号営業)は17店、3号営業(当時は6号営業)は6店である。
その他(遊技場営業)4号営業 - まあじやん屋(雀荘)、ぱちんこ屋(パチンコ店)など
5号営業 - ゲームセンターなど「4号営業」と「5号営業」の違いは、「4号営業」が「設備を設けて客に射幸心をそそる恐れのある遊技をさせる営業(遊技方法自体が射幸心をそそる恐れがあるもの)」、「5号営業」は 「遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそる恐れのある遊技に用いることができるもの(遊技方法は射幸心をそそるつもりはないが、遊技設備が本来の用途と別に射幸心をそそる可能性があるもの)」とされている。

(Wikipedia風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」より)

 

メイド喫茶風営法に引っかかるかどうか、その争点はズバリ「接待飲食等営業1号営業」、メイドの接客が「接待」に当たるのか、というところにあります。私には分からん。

なのでそれっぽいサイトを色々見てみました。

adachi.icu

minerva-copyright.xyz

kyoto-keijibengosi.com

 

内容的を総合すると、

 

「あ〜ん」はアウトだが、「萌え萌えキュン」「おいしくな〜れ」はギリセーフ

 

という感じですね。う〜む、よくわからん。ただ接客内容によってはグレーな存在であることは確かなようです。

とりあえず違法営業を回避するために、あまりベタベタに会話せずさっさとオチをつけて部屋に戻るみたいな話もあるみたいですが、真偽やいかに。

 

 

そして応用

さて、ここまで読んだ方はメイド喫茶に興味がある方とお見受けします。では基礎知識を十分に仕入れたところで、実際に行ってみましょう。名古屋市内にもそれなりにありますが、目につくところに沢山あるのはやはり大須でしょう。

 

大須の場合

名古屋市には大須という、秋葉原をショボくした感じの街があります。

まあこの絶妙なショボさが私は好きなわけですが、ここには私が確認しただけでメイド喫茶が3店舗あります。(このブログ書くために色々調べた結果、本当はもう8店舗あるっぽいです。調べれば調べるほど増えていったため、私は驚愕のあまり震えました。)

 

めいどりーみん

maidreamin.com

所謂メイド喫茶です。よく客引きをしているので、すぐわかると思います。

お屋敷ではなく夢の国という設定なので、入店は「入国」退店は「出国」という扱いになります。あまり詳しくは知らないですが、喫茶店としての通常の営業と、メイドによるライブ営業があるらしいです。

余談ですが私の友人はここに行きました。だがしかし通常営業の終わりがけだったため、クマさんパフェを爆速で食し、メイドのライブを見たといいます。

私は行ってないのでよくわかりませんが......。

 

エンジェルメイド

concafenavi.com

建物の二階に存在するため、個人的にやや敷居が高いです。いかにもなメイドのアニメ絵が目印。

バイト先の先輩曰く、可愛い子が多いらしいですが、彼女の「可愛い」の範囲は相当広く、泥酔した私も含まれるのであまり当てにならないです。

私は行ってないので真偽のほどは定かではありませんが......。

 

メイリー

mai-leaf.com

中心街からやや離れたところにあります。メイド服が緑色で、今年で10周年の老舗らしいです。なぜかバー営業もしています。私が行きました。

猫耳とか付けてこなかったので、無意識にメイドを殴らずに済みました。とは言いつつ所謂メイド喫茶っぽさもあり、何より紅茶が美味かったです。メイド喫茶初手でここはかなりアリだと思います。

私はここしか行ってないのでこういうことが言えます。

 

最後に

そういえばこのサークルは読書サークルだったので、メイドが出てくる漫画を紹介しときます。おかしいなあ、メイド喫茶サークルだった気がするんだけどなあ。

 

それでも町は廻っている

 

下町の喫茶店が、急にメイド喫茶に改装するところから始まる、下町メイド喫茶コメディーです。

登場人物の1人を除き、誰もメイド喫茶が何であるかを知らない。何なら作者も知らない。なぜメイド喫茶で漫画を描こうと思ったのか?知らないのに描けると思ったのか?という疑問符が脳内を駆け巡りますが、面白いので全く問題なかったです。

ちなみに内容的にメイド喫茶に改装する必然性は全くなかったです。それどころか喫茶店が出てこない話も多いです。

 

今回はこんなところで終わりましょうかね。いやー長い記事だった。おわり。

 

文:榊原